古い岳友が冬山で遭難したまま帰らない
せめて遺体だけでも捜して弔ってやりたいと
山男たちは、なんども山に入った。
夏に近い頃に、やっと、山スキーだけがみつかった。
そこは稜線のガレ場から、300mもザイルで下降した
沢の源頭に近い谷川。
しかし、山男たちの懸命の捜索にも拘らず
岳人を探せぬままに、山は日に日に緑に覆われた。
岳人は迷い込んだ冬の沢で夜を明かし、
生を求めて何処に向かったのか
意を決して、その日の岳人と同じように
ひとり、川床で夜を明かし、
疲れた体を自然に委ねてみよう
山に聞く 岳人の待合
かつて若い岳人を山で失ってから
ザイルを手にするのは久しい
登攀具とツェルトと
供養する茶道具をザックにつめて
心は岳人に戻った
安達太良山 石莚大滝沢朝茶
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